水師営の別館

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五輪ボランティアと就活

にわかに話題の五輪ボランティア

3年後の東京五輪を前に、施設や観光などの対策に我が国は迫られています。世界の精鋭が東京に集う「平和の祭典」には莫大な支出が予想される一方、その支出については今も開催都市と周辺都市で折り合いが完全についていません。そんな五輪を成功させるためにはお金の力が必要でありますが、人の力もまた必要になってきます。そこで取り沙汰されているのが「五輪ボランティア」です。


過去の五輪開催地でも競技場の運営スタッフや外国人応対などでボランティアが活躍しましたが、東京五輪で想定されるボランティアの処遇の悪さに焦点が当てられ「こんな条件で誰が参加するんだ」とネット上では冷ややかな意見が集まりました。その非難や議論の中で出てきたのが「面接で五輪ボランティアをアピールする就活生が出てきそう」という声でした。


面接のネタ作りにもってこい?

就活生の中には、就活本や就活コンサルタントの言うこと真似をした「(結果的に無個性な)『個性的』アピール」をしたり、企業受けのいいネタ作りや人格作りに奔走したりする学生もいます。そんな彼ら彼女らにとって五輪ボランティアという経験は「個性的」で「協調性」のある「国際色」豊かな「積極的」学生を演じられる絶好の機会かもしれません。


馬鹿馬鹿しい偽装でしかないと私は感じますが、これが近年の「好ましい就活生像」の傾向ですから、それに合わせようとする心情も分からないわけでもありません。しかし「大学生活を就活のネタ探しに費やして本当に楽しいの?」と思うと、このような得点稼ぎのボランティアや話のネタ作りのためのインターンが有用なのか甚だ疑問に思えてなりません。


経済状況と五輪ボランティア

五輪ボランティアをアピールする可能性があるのは五輪開催年度以降に就活をする、2018年度入学以降の学生でしょう。そこで考えたいのがそんな彼らの就活環境です。五輪後の開催国の経済は需要の先取りをしたために悪化することが一般的です。加えて我が国は2019年10月に消費税の10%への増税が予定されていることから、就活の「買い手市場」が予想されます。


つまり彼らは残念ながら不景気世代になるかもしれません。そんな不幸につけこむのがボランティア(やインターン)で差をつけようと宣伝する悪い大人たちです。理想的な学生を演じよう、差別化を図って内定を掴もう、コミュ力をアピールしようなど、景気が悪くなった時代だからこそ、こうした「ポジ要素」を藁にもすがる思いで掴もうとする学生が増える可能性は大と言ってもいいでしょう。


ボランティアアピールはウケるのか?

しかし、面接ネタ合戦という「これまでの傾向」と五輪ボランティアという「分かりやすいネタ要素」に不遇な「経済状況」と周囲からの「圧力」という四面楚歌な状況に逆らえず、仮に五輪ボランティアをしたところで評価されるかは不明でしょう。なぜならみんなが同じボランティアアピールをしても差別化にも、秀でたアピールにもならないからです。またこの話かと受け止められるだけです。


私のようなひねくれ者が採用担当ならば「どうせこの子は就活のためにボランティアをやったのだろう」と意地悪な質問や評価をされるかもしれません。その場合はむしろマイナス評価になるかもしれません。したがって未来の学生さんには周りに流されてボランティアする必要はない、面接のネタ作りというよこしまな気持ちはバレると強く言いたいです。


今、私を含めやれやれ就活が終わったと思っている我々大学生も数年後、総務とか人事に配属される可能性は十分にあります。その時、五輪ボランティアアピール学生が本当にいたとき、安易にいい学生と思わないようにしましょう。