水師営の別館

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【陣風賦】H30.5.30 「やりがいのリスク」

社会現象にもなった人気ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の中でヒロインが述べた「やりがい搾取」は昨今の日本が抱える問題を指摘する言葉ではないだろうか。


東京五輪を2年後に控え、五輪ボランティアについて検討が行われた。募集案があまりにも「ブラック」過ぎると批判が殺到した中で示された対案が「やりがいのPR」であったことに批判がさらに集まった。


▼「これからやりがいをアピールするために使うお金があるのならボランティア参加者にお金を回せ」という批判の声はごもっともだ。やりがいをPRするための宣伝や広告には多額のお金が使われるのだからやるせない気持ちになる。


▼もちろんボランティアであるから金銭という対価が支払われる労働ではない。しかしながら肉体的、金銭的負担の大きい現状を少しでも改善しようとせず、各人の精神力で何とかしようとする点に社会の貧しさが現れているように思う。


▼仕事や作業の要求基準はそのままに、正当な評価が下されず、その後の処遇が悪化するところにやりがい搾取の問題点がある。また達成感や充足感で過酷な環境をごまかすことも問題だ。自分はたとえそれで良くとも、次にその活動に従事する後任者の存在を思うとやりがいを物事の基準にすることはやはり危険だ。


▼つまりやりがいだけでは物事が持続しないのだ。五輪ボランティアがやりがい搾取で失敗してしまえば、ボランティアという概念自体にネガティブな印象がつきまとい人々が集まらなくなる。やりがいをアピールし続けた業界が人手不足の真っ只中にいるのはいい例だろう。


▼長引くデフレ経済の中で、対価を支払うという感覚が壊れてしまった結果の一つがやりがい搾取なのかもしれない。コストカット、経費削減ばかりに意識を取られた四半世紀の集大成としての五輪にならないことを私は願う。