水師営の別館

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【陣風賦】H30.7.2

働き方改革関連法案が参議院本会議で可決された。安倍首相は本法案の成立を受け「70年ぶりの大改革」とコメントを残した。残業時間の上限設定や同一労働同一賃金に向けた取り組み強化などの規制強化を進めた一方で、野党から厳しい批判にさらされた「高度プロフェッショナル制度(以下高プロ)」もまた成立した。


▼「高プロ」で自由で柔軟な働き方を促進するとの触れ込みであるが、残念ながらそれは実現しないだろうというのが私の見方だ。そもそも多くの日本人労働者が個人の裁量や配分を与えられて働いているかという疑問がある。働けば働くほど次の仕事が追加され、自分のペースで働こうものなら嫌味を言われるのが多くの職場で見られる姿ではないだろうか。


▼名前ばかりプロフェッショナルと認定され酷使されても、法規制の対象外に身を置くわけだから、万が一の時に過酷な労働環境を証明することが極めて困難になる。柔軟性も、労働環境の保障もないが、一定額を支払えば使い放題も可能という経営者有利の制度だということを全国のサラリーマンは認識すべきだろう。


▼また「対象となる職種や年収は限られるから私は大丈夫」と思うのは早まった考えだ。法律で職種や年収は明記されておらず、あくまでも省令で規定される。この省令を定める時、影響力を持つのは経済界や学者といった現場のニーズを知らない人たちだ。この範囲を拡大し、年収要件も下げることが競争力と生産性の向上につながると考える、私からみればおめでたい人たちが彼らなのである。


▼現下の法律でも規制が規制として機能しない中、この緩和策に反対するのも当然だ。そもそも職場環境の悪さから心を病んだり、労働意欲が減退したりする者が我が国には多い。働き方改革は単なる法律論だけでなく、我々の労働慣習や価値観がこのままで良いのかなどにも向き合うべきであった。それを怠ったまま推し進める改革の行き着く先は「一億嫌々労働社会」だと私は強く言いたい。