水師営の別館

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【陣風賦】H30.11.8「帰らぬ助っ人?」

今日のプロ野球人気を支えた要素の一つに助っ人外国人選手の貢献がある。今なおファンの間で往年の名選手、迷選手たちのプレーは語り草となっており、プロ野球談義を盛り上がらせる存在だ。結果こそ全てのプロスポーツの世界、長きにわたって活躍した外国人選手は数えるばかりだ。その多くは数年も経たぬうちに日本球界を去っていく。


▼「助っ人」と呼ばれるように、彼らは何年もチームに在籍することは想定されていない。不振になれば解雇だし、高額年俸がネックとなれば退団だ。しかしそれはプロスポーツだからこそ成立する話である。これがごく一般的な外国人労働者ならどうだろうか。もう使い物にならいといってクビにできるであろうか。そんな不安を尻目に政府は外国人労働者流入を推し進めようとしている。


▼これは「移民」なのかと問われれば否定し、労働力不足を一時的に補う措置だと説明する。しかしその姿勢は言葉をもてあそんでいるに過ぎない。新在留資格として挙げられる「特定技能2号」は永住を認め、家族を呼び寄せることを可能にしている。もはや移民同然であるし、受け入れ人数や対象職種の指定など改正案の根幹部分への説明が釈然としない。


▼いらなくなったからといって物のように母国に帰国してもらうことはできないのだ。人道的な問題は当然あるし、劣悪な環境と賃金の下で働かされる技能実習生制度は現在進行形の問題として解決していない。見切り発車で外国人労働者流入を認めた後で経済的、人権的、社会的問題が起きては遅いのである。


▼人手不足は賃上げと労働環境の改善に寄与しつつある。その機運を停滞、逆行させることに今回の法改正はつながりはしないかという懸念がある。口で日本人と同等の条件を徹底させると言うのは容易である。産業界は歓迎ムードであるがそれ以上に多く存在する全国の労働者の所得と雇用が悪化してしまえば日本経済はたちまちデフレと不況の真っ只中だ。


外国人労働者はすでに都会を中心にあちこちで働いているが、彼らは使い勝手のいいロボットや日本人の召し使いではない。いずれ老いるし、やがて権利意識は大きくなっていく。これらの問題に取り組まずして何が外国人労働者の受け入れか。経済、人道、社会構造、少なくとも三方面からの攻勢に耐え得る設計でない限り、この改正は将来に累を及ぼす。