水師営の別館

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【陣風賦】R2.2.11「野村克也逝く」

偉大な名選手、名監督がこの世を去った。プロ野球南海ホークス選手兼任監督としてプレーし、ヤクルト、阪神楽天で監督を務めた野村克也氏が11日死去した。84歳だった。


▼入念なミーティングと緻密な作戦を展開する野球はID野球とも称された。彼が遺した理念の一つに「プロセス野球」がある。その野球哲学は自身の絶え間ない努力に裏打ちされたものであった。


▼無名の高校から捕手として入団した野村氏は一年目のオフに見込みなしとして解雇を通告された。それでもなお燦然と輝く成績を残せたのは人一倍の練習というプロセスがあったからだ。「プロセス重視なくして、真のプロは生まれない」と語ったのはそのためであろう。


▼野村氏は決して結果を軽視しているわけではなかった。「結果がほしければほしいほど、そこにいたるまでの内容を第一義的に考えなくてはならない」ためである。天才型ではなかったからこそ言える発言だ。


▼また野村氏は「『失敗』と書いて『成長』と読む」とも語っている。結果至上主義で成果ばかり求める昨今の風潮を否定する金言ではなかろうか。成果と過程は切っても切り離せない関係にある。失敗しないことを重視するあまり、個人がチャレンジすることを妨げるようにはなってないか憂慮している。


▼人間教育に重きを置いた指導方針は野球界のみならず、多くのリーダーたちに参考されてきた。それらの組織論、人間論は厳しさのなかに温かみがあり、論理的な説明なかに豊かな感情を感じ取ることができた。まさに言葉と共に生きてきた指導者の鑑だった。死してもなお言葉が語り継がれる限り、魂は永遠に生き続けるだろう。