水師営の別館

Twitterで呟ききれなかったことや最近気になったことを書くブログです。

日本を取り戻す戦いは終わらない

安倍元総理の死

7月8日、僕は精神科を受診しにクリニックへ向かっている途中だった。何気なくTwitterを見たとき日本社会では信じられない文字を見てしまった。「安倍さんが銃撃されたらしい」と。臨時ニュースはネットをテレビを駆け巡り心肺停止という情報を目にしたとき僕は恐ろしい気持ちになった。きっと安倍さんのことだから死の淵から還ってきて健在ぶりを見せてくれるだろう、そんな祈りは叶わぬまま夕方、死亡が確認された。67年の生涯だった。


私は安倍元総理を高校生の時、街頭演説で一度見ただけで日本のリーダーということ以上に関わりはなかった。しかし心の中にふつふつと生まれてくる喪失感と犯人に対する怒りでいっぱいになった。そして元々は長野選挙区の応援演説に行く予定が変更され奈良に移動してしまった偶然のいたずらに悔しさを感じた。あれから数日経って我々は受け入れがたい現実に直面している。日本の明日を切り拓き、世界を牽引する稀代のリーダーを失ってしまったのだ。


日本の外交・安全保障を切り拓いた安倍元総理

民主党政権で日本の外交・安全保障は危機的な状況に陥ってしまった。日米同盟は冷え込み、我が国のリーダーはルーピー(頭がおかしい)と軽蔑され緊密な連携が図れなくなった。また尖閣諸島中国漁船衝突事件が起こり中国の領土的野望に対処できないまま力に屈してしまった。韓国には李明博大統領に竹島訪問を許し日本はまさに内憂外患の状態になったのだ。そこに失意の日々から復帰した安倍晋三自民党総裁に就任し解散総選挙自民党は歴史的大勝を2012年12月果たした。


まず取り組んだのは日米同盟の強化である。2013年2月米国オバマ大統領と首脳会談を行い安全保障の強化を誓った。それから安倍内閣は安全保障の立て直しに奔走した。国家安全保障会議を設置し日本の安全保障政策の長期的戦略策定のために国家安全保障戦略閣議決定した。中国が着々と軍拡に走り、北朝鮮は核開発を行う厳しい安全保障環境の中で打ち出されたのが「積極的平和主義」である。これは我が国が憲法に生き憲法に死す空想的平和主義から脱する画期的な理念であった。これは貫くべき日本の立場だろう。


さらに日本の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものを「特定秘密」として指定し、取扱者の適性評価の実施や漏えいした場合の罰則などを定めた「特定秘密保護法」を2014年成立させた。日米の防衛協力に資する情報保全について定め、我が国の情報管理体制を強化した。この時、左派政党・メディアから強い批判にさらされた。しかし強い信念を持ち日本の情報管理に一石を投じたこの法律は国家国民の安全に貢献していると強く信じるものだ。


平和安全法制の制定で新時代の安全保障を切り拓く

積極的平和主義の旗の下、日本が世界の平和と我が国の平和を維持するために「平和安全法制」を2015年9月成立させた。これは集団的自衛権の行使を禁止する政府見解を修正し、部分的な集団的自衛権を許容した安全保障政策の大転換である。日本に対する武力攻撃、又は日本と密接な関係にある国に対して武力攻撃がなされ、かつ、それによって「日本国民」に明白な危険があり、集団的自衛権行使以外に方法がなく、必要最小限度の実力行使に留まる場合(これらを自衛の措置としての武力の行使の「新三要件」という)に集団的自衛権が導かれるとした。


我々は中国の脅威、北朝鮮の脅威、ロシアの脅威に直面し厳しい安全保障環境の中に置かれている。切れ目のない安全保障政策を整備し、日本の抑止力を高めたこの法整備はまさに日本に対する攻撃あるいはその可能性を未然に摘み、日本自身が「すきまの無い態勢を構築する」、また日本の防衛に不可欠な日米安保体制を強化することを目指すものだった。そして日本と国際社会の協力を高め、一層の貢献を行うことも目的になっているのだ。国の守りは国家という民族共同体の維持と繁栄に欠かせない精神であり政策である。混乱する世界の趨勢の中で我が国が我が国であり続けるために成立させた意義は大きい。


自由で開かれたインド太平洋で世界と協調する

2016年8月に当時の安倍晋三総理が提唱した日本政府の外交方針が「自由で開かれたインド太平洋」である。これは①法の支配、航行の自由、自由貿易等の普及・定着②経済的繁栄の追求(連結性,EPA/FTAや投資協定を含む経済連携の強化)③平和と安定の確保(海上法執行能力の構築,人道支援・災害救援等)を原則とした考えである。これは日本が国際的外交の中心プレイヤーとして地域の平和と安定のために描いた画期的ビジョンであった。


普遍的かつ平和的理念はやがて同盟国の指導者からも支持され2017年11月、当時のドナルド・トランプ米大統領はアジアを歴訪し、ベトナムで行った演説で「自由で開かれたインド太平洋」と言明した。地理的に中国に対抗するだけでなく、魅力的な価値観を掲げて中国の権威主義や国家統制主義モデルにも対抗しようとした外交方針は今や民主主義国家の共通する外交方針となった。日米豪印はインド太平洋の指導的地位を持ち、国際政治の大局と道義的な高みを追求する国家である。国の大小にかかわらず、全ての国に恩恵をもたらす平和と繁栄を我々で目指し、中国が力によって小国を圧迫して国益の追求を行うことがないよう牽制する狙いがあるのは言うまでもない。


憲法改正を果たし安倍元総理の遺志に報いよ

安倍元総理がライフワークとして目指していたのが憲法改正である。我が国の基本法となる憲法が制定されて70年以上が経つ。世界は変わり、日本も変わった。日本国憲法は戦後の民主化と国民の権利擁護に果たした役割が大きいが、時代の変化に適応できてない問題点も散見される。特に憲法9条は我が国の平和と国民の生命と財産を守る点において欠陥だらけではないだろうか。武力行使を行い世界有数の「軍隊」である自衛隊を明記し民主的統制と正統性を証明することは不可欠だ。


どのような形で自衛隊自衛権を明記するかは改憲に前向きな4政党の中でも議論が分かれる。改憲の本丸は憲法9条であるが、そろそろ議論を本格化させ一定のコンセンサスを得るべきである。我々の手で新時代にふさわしい新憲法を制定すべきである。これが凶弾に倒れた安倍元総理に報いる唯一の道であり、故人が目指した日本の平和と世界の安定に寄与する我らの道である。中国は尖閣、台湾に対する野望を隠さない。かつて安倍元総理は「台湾有事は日本有事」と言った。まさにその通りであり、日本の生命線を守るために行動できる憲法改正を実現すべきだ。防衛費増と憲法改正は残された我々に課せられた使命だ。